シール印刷で使われる印刷は凸版の版になります。
学生のころ、図工又は美術の授業で版画をされたことがあると思います。あのイメージで版には凹凸があり、出っ張ったところに印刷機械のローラが当たり、インキが塗布されます。
シール印刷では材質の違う2種類の版を使用して印刷しています。金属版と樹脂版です。
金属版はインキを紙面に転写する時に使う場合は平圧印刷機で使用します。
それ以外にもエンボス加工や箔押し加工を行う際にも使用しています。
次に説明する樹脂版と比較して、版材に強度があり、強い圧力を加えることが出来るためです。
樹脂版で強い力でプレス加工するとマージナルゾーン(版の凸部が強い圧力によって押しつぶされ、凸部の頂点以外にもインキがつき、紙面には対象のデザインの周囲に枠のようなものが出来てしまうこと)が発生しやすく美しくありません。
また樹脂版では箔押しに必要な高温に耐え切れないため、使用できません。
金属版は熱に強く、強力な力に耐え切れるため、印刷作業ではなくてはならない副素材です。
その材質は真鍮(銅と亜鉛の合金)版、亜鉛版、マグネシウム版があります。
真鍮版は硬くて熱に強く丈夫です。しかし製版の段階で板を溶かす腐食作業が完璧ではないことが多く、不必要なところに稀にデザイン上ないはずの点がある場合あります。その際、印刷する際には作業者が刃物で不必要な点を削って作業しています。
亜鉛版は素材自体が解けやすいため、製版段階での腐食作業が行いやすく、不必要なところに点などが発生しくいです。ただあまり硬い金属ではないため、エンボス加工に使うと版の出っ張った場所が角から丸みを帯び、へこんできます。箔押し作業で熱を加えると亜鉛の素材がより、柔らかくなるため、エンボス・箔押し加工にはあまり使われることがありません。
マグネシウム版は硬くて熱に強く、腐食作業も行いやすいため、大変、不必要な点の発生もなく使いやすいです。印刷もエンボス・箔押し加工にも耐えられます。問題は酸素と反応がしやすいため経年劣化が起こりやすいことです。定期的に作り直す必要があります。
弊社では主に真鍮版を使用して印刷、その他の加工を行い、お客様に印刷物を提供しています。
金属版は古くからある版に対して現在主流となってきているのが樹脂版です。
樹脂版は柔らかく、簡単に曲がるため、凸版輪転印刷機や凸版間欠印刷機などの円柱状の版胴に使用することが出来ます。
金属版は硬くて平面なので輪転機系の印刷機には使用できません。
金属版に比べて精度が高く、不必要なデザイン上に存在しない点もないのでそれが原因の不良品の発生はありません。
しかし既述のように柔らかいので印刷圧力が高すぎるとマージナルゾーン(版の凸部が強い圧力によって押しつぶされ、凸部の頂点以外にもインキがつき、紙面には対象のデザインの周囲に枠のようなものが出来てしまうこと)が発生するので圧力の掛けすぎには注意します。
また金属版に比べて柔らかく紙面に密着しやすいのでインキの転写がスムーズにでき結果、きれいな印刷が仕上がりやすいですが、版材が痛みやすく、経年劣化によって亀裂が入ることがありますので金属版以上に版の再作成の頻度が高くなります。
製版精度が高いので次に述べるフルカラー印刷で使用する網点のある版を作るのには必須の版材です。また線の細かいデザインを製版する際も、樹脂版が使用されます。
写真のような色の濃淡、色の変化に富んだデザインを印刷するための版の紹介を行います。
紙面上で色の3原色の原理を利用して印刷するための版は点描画の要領で作成されます。
イメージとしては版を細かいセル(細胞状)に分け、そのセル一つ一つの占有面積で印刷時のインキが紙面に付く量を調整します。端的に言うと、版の表面は大小さまざまな大きさの点の集合体になっています。
そのセルの細かさを現す表現方法を印刷用語で「線数」といいます。
線数は1インチ(25.4㎜)当たり何個のセルに分けたかということになります。
線数の数値が高いほど、細かい印刷になります。
シール印刷では100線から200線で印刷されます。
印刷濃度が低い部分ではセル一区枠に細かな点が一つある状態になり、印刷濃度が極めて高い場合、濃度100%の時はセル全体がインキが付く状態になります。
線数が高いほど、印刷はきれいに仕上がりますが、同時に点と点の間にインキが溜まりやすく印刷物が汚れやすくなります。
逆に線数が低いと点の間にインキが溜まることはありませんが、画像が荒くなります。